未承認薬と保険診療併用へ 一部抗がん剤、臨床試験で

すもも

2013年05月11日 00:00

未承認薬と保険診療併用へ 一部抗がん剤、臨床試験で

がんや難病など重い病気に苦しむ患者が、高額の治療費を負担せずに国内未承認の薬を使える仕組みが始まる。医師による臨床試験(治験)の形で未承認薬を使い、治療費については公的医療保険が使えるようになる。第1号となる抗がん剤の使用を9日、国立がん研究センター東病院(千葉)の倫理委員会が承認した。

これまで未承認薬は患者らの個人輸入で使われ、高額の治療費が大きな負担だった。厚生労働省は今後、この仕組みを導入する拠点病院を選ぶほか、患者の安全に配慮しながら進める指針も作る。第1号は、胃や大腸など消化管の壁にできるまれながん「消化管間質腫瘍(しゅよう)」の抗がん剤レゴラフェニブによる治療。米国では承認されている。6月にも始まる予定だ。

厚労省は他に治療法がなく、早く治療しないと命にかかわるがんや難病を対象に仕組みを広める。海外で承認されているなど安全性がある程度、確認された未承認薬が対象。がん患者団体などから複数の薬の要望が出ており、具体的に決めていく。

この仕組みでは、医師主導の治験という形をとって、公的医療保険による保険診療と併用できるようにする。厚労省は昨年末、医師主導による治験の手続きなどを大幅に簡略化し、医師の負担を軽くした。第1号の治験ではバイエル薬品が薬を無償で提供する。製薬会社による治験と同等の厳しい基準で行う。

今回の治験の責任者、土井俊彦・国立がん研究センター東病院消化管内科長は「日本でこの仕組みが始まるのは画期的。ただし、使う未承認薬はまだ少数の患者しか使っていない、未知の要素を含んだ治療であることを医師も患者も忘れてはいけない」と話す。(医療担当・大岩ゆり)

◆キーワード
<未承認薬> 薬事法による承認を受けていない薬。製薬会社による治験など以外では、患者や医師が個人輸入して使うしかなかった。薬代が月に100万円を超える患者も少なくない。また、個人輸入で未承認薬を使う場合、自由診療と保険診療を併用する「混合診療」が認められず、薬代以外の検査費や入院費なども全額自費になる。個人輸入で、海外の悪質な代理店から偽薬が届く被害も報告されている。

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