婦人科がん治療のトピックス
特別講演会『婦人科がん治療のトピックス』
-初回手術から再発時の治療まで-
東北大学病院 婦人科特命教授・婦人科長:新倉 仁先生
子宮頸がん
◆広汎子宮頸部摘出術・・・子宮頸部は広汎子宮全摘出術と同様に摘出し、残った子宮体部と膣をつなぎ直す
対象の患者さんは、強い挙児希望があり、画像判断上、病変が頸部以外に認められない方。他にも、腫瘍径や、組織型*1などの条件があります。予後は広汎子宮全摘出術と同等の可能性が高いとのことですが、今後も検証を継続していく必要があり、不妊症としての対応、産科的な管理も重要になる。
◆術中電気刺激による神経温存手術・・・術中、膀胱内の圧トランスデューサーを挿入。各部位の神経を電気刺激し、膀胱の収縮をみることで神経の走行を確認し、確実に骨盤内の神経を温存する
これまでの広汎子宮全摘出術では、子宮につく靭帯を切らないと子宮を広い範囲で取れないことから、どうしても骨盤内などの神経が傷つき、排尿困難、尿失禁、尿路感染症などの後遺症を起こしやすくなっていた。現在は、術中膀胱神経刺激の導入により、約90%で神経が可能になり、おかげで後遺症に悩む患者が少なくなった。
◆センチネルリンパ節(SLN)生検による縮小手術・・・SLNとは、がん細胞が最初に到達する見張りリンパ節のこと。ここに転移がなければ他には広がっていないだろうという想定で、系統的リンパ節郭清の省略が可能になる。
それにより、術後が楽になり、リンパ浮腫になるリスクは減る可能性がある。
*1 組織型(そしきけい)とは、腫瘍細胞の分化と増殖形態に基づく病理組織学的な腫瘍の分類を意味する。病理診断では、しばしばそれに悪性腫瘍#分化度 分化度や組織構築の特徴を付記して組織型を表現する。扁平上皮がん、腺がんなど
子宮体がん
◆内視鏡下手術・・・臨床研究として、現地点では筋層浸潤を認めない子宮体がんが対象。
子宮全摘、付属器摘出、骨盤リンパ節郭清の手順は開腹時と同じで、お腹を切ることなく子宮は経膣的*2に取り出す。今後、手術できる患者の対象を広げる、入院期間の短縮を目指すなど、研究中。
*2 経膣的
経膣式的手術のメリット
•腹腔鏡下の手術より安価でお腹の傷も全然残りません
•手術後の痛みが少ない
•手術後の治癒のスピードが早い
•お腹を切った場合腸が空気中にさらされることによる癒着の可能性があるが、膣式では少ない
など
卵巣がん
◆分子標的薬
従来の抗がん剤は正常細胞をも攻撃。分子標的薬はがん細胞の増殖因子をピンポイントで攻撃。
先生からのひとこと:
再発しないのが一番です。その為にも、定期フォローは続けましょう!
しかしもし万が一、再発してしまった時には、諦めないで頑張る人、頑張らないで少しも苦痛なく自分の自然の力に任せたい人。どちらにも適切にサポートしたいと思います。
希望をなくさず、あきらめず。でも頑張りすぎないことも時には大事です。
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