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早期大腸がんは電気メスの「内視鏡的粘膜切除術」で根治できる

早期大腸がんは電気メスの「内視鏡的粘膜切除術」で根治できる

 粘膜固有層に留まっている大腸がんは転移の危険性はないため、内視鏡による治療が可能だ。粘膜からキノコのように隆起している場合は、根元に輪になった電気メスを巻きつけて通電し、切除する。平坦、あるいは陥凹形状の早期がんについては、がんの下に生理食塩水を注入後、電気メスでがん病巣のみを薄くはぎとる、粘膜切除術で治療が可能だ。

 早期の大腸がんはその形によって隆起型、平坦型、陥凹型(一部が凹んでいる)に分類される。

 がんが大腸表面の粘膜固有層に留まっている場合は転移する危険性は少ないが、その下の粘膜下層に深く浸潤すると転移の可能性が生じるため手術で周囲のリンパ節なども含め切除する必要がある。

 その下の固有筋層に達すると進行がんとなり、肺や肝臓などに転移するリスクが格段に高まる。また、陥凹型のがんは5~7ミリの大きさで粘膜下層に浸潤する傾向にあり、悪性度が高いといわれる。

 国立国際医療研究センター国府台病院消化器光学診療部の為我井芳郎部長の話。

「早期がんは内視鏡で根治できます。キノコのように隆起しているポリープは、根元にスネアという輪になった電気メスをかけて通電し、切除します。平坦型や陥凹型の病変では、粘膜下層に生理食塩水を注入して隆起させ、スネアで切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)で対応が可能です。多くは外来通院で治療が可能で、安全性もほぼ確立されています」

取材・構成■岩城レイ子

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内視鏡的粘膜切除術とは・・・

がんの検査の際に体内を目で確かめるために、口や鼻、肛門から小型カメラを入れて体内をみる「内視鏡」による検査を行うことがあります。内視鏡は検査をするだけでなく、良性のポリープやまだ早期の小さながん腫を切除する機能も備えているため、がんの検査で異常ながん腫やポリープを発見した場合には、そのまま切除まで行うことができます。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)は、2cm以下の消化管の早期がんで多く行われている内視鏡切除術です。例えば2cm以下の大腸がんやその前段階の病変の場合、大腸の粘膜の下層に生理食塩水を注入して病変を盛り上げ、ループ状の器具をひっかけて切除し、回収します。この一連の治療を内視鏡によって行います。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)もEMRと同じ内視鏡切除術ですが、EMRと異なるのは、これまで内視鏡では治療できなかった、2cmを超える大きさの平坦ながんも内視鏡で切除できることです。

例えば大腸の粘膜にある、盛り上がっていないがん病変に対して、粘膜の下層に生理食塩水を注入して病変を盛り上げ、ITナイフという器具でがんを切り開き、はがし取ります。早期がんについては完治が期待できる治療法ですが、リンパ節の切除は行えないため、リンパ節転移がみられる場合には適応外となります。

<EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のメリット>

患者の身体への負担が少ない
EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ともに内視鏡によってがん組織や病変を切除するため、一般的な開腹手術と比べて患者の身体への負担が少なく、また病巣が完全に取り除けたかどうかを内視鏡で確認することができます。2cm以下の早期がんなら日帰り手術が可能な場合もあります。

保険適用の治療法
EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ともに健康保険が適用されます。ただし、ESDについては大腸がんに対しては健康保険適用外で、先進医療として認められています。先進医療の場合、治療にかかる費用は自費ですが、検査等の費用は健康保険が適用されます。

<EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のリスク>
EMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を比べると、ESDのほうが対応できる範囲が広く、メリットがあるといえます。しかしESDのほうが熟練した医師の技術を求められるため、それに伴うリスクを生じることがあります。

ESDでは出血や穿孔の恐れ
ESDではEMRより大きく患部を切除するため、出血や腸壁、胃壁などに穴を開けてしまう恐れがあります。胃よりも壁が薄い腸のほうが高い技術が求められるといわれています。

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    2013年03月04日 Posted byすもも at 00:00 │Comments(0)がん情報

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